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2024-08-18 09:14:00

試行錯誤

日本の最初の住居建築は、縄文時代の竪穴式住居だと言われている。

深さ60㎝ほどの穴を掘り小屋を被せるという極めてシンプルなデザイン。掘立柱を利用した屋根の架構も洗練されている。これは集落の寄りによってあっという間に完成したそうだ。

当然、竪穴式住居もいきなり発明されたのではなく、先人たちの数知れない試行錯誤により徐々に形作られたものだろう。耐用年数も15年ほどだというから驚きだ。更新の際も廃材は自然素材であるため野山に捨てるだけで良い。今で言う、循環型社会であったようだ。

 

おそらく竪穴を掘った理由は、地面より下の方が、冬は暖かく夏は涼しいというのを知ってのことであろう。茅葺きの屋根は断熱の効果があり、棟部分には換気口もある。煮炊きと暖房のための炉もあったようだ。出入り口から棟への通風も考えられている。そしてワンルームというシンプルなプラン。まさに日本最初の全館冷暖房住宅だ。

 

一方、現代の全館冷暖房住宅というと、床は地面から60cmほど高いところにある。そのため、床下又は基礎面で断熱しなければならない。また壁や屋根の断熱においても、茅などの自然素材は集められないから、ガラス繊維やプラスチック系の断熱材を貼ったり充填したりすることになる。また、冷暖房はエアコンなどの設備機器を利用している。自然素材だけで建てられたのではないから、解体後の廃材の処分には気を使わなければならない。

当然だが、縄文時代と違って、自治会の寄りで作られるわけではないから、大工をはじめとした数々の専門業者によることになる。設備機器もメーカーで作られる。流通も含めて住宅一棟作られるのに多くの人間が関わっている。

 

現代社会はとっても複雑で高度だ。シンプルでわかりやすい方が良いと言っても縄文時代には戻れない。高度な情報化、多様性などが叫ばれるが、快適な住まいを作るという目的は縄文時代からずっと変わらないだろう。

 

一昔前に比べ、一般住宅の建築もますます高度な技術が要求されてきている。高断熱による温熱環境の高性能化と数値化、構造計算による耐震性の確保、再生可能エネルギーによる省エネ化、メンテナンス性の良さ、耐久性、設計のBIM化など、盛りだくさんだ。

文化は時代と共に変わって行くが縄文の精神は引き継いでいきたい。少しでも良い方向へ向かって、新しい価値を創造していかなければならない。

 

現状維持は後退を意味すると誰かが言った。多くの課題を抱えながら、先人たちのように試行錯誤を繰り返し、自らどんどん変化していかなければならない。